美味しかった昔の野菜を求めて・・・さいたえん農場



菜多園の挑戦

 在職中の農業高校教諭時代は一貫して化学肥料による生産を研究指導してまいりましたが2001年から、さいたえんでの高原野菜の栽培の研究を行っています。感想としては、研究初期、自然気候風土と調和していくことの難しさを痛切に思い知らされました。しかし2003年の夏には特に茄子科の野菜に成果を挙げることができ、以降今日までに72品目の試験栽培を終え、天候の影響は避けられませんが、商品として販売消費ができる52種前後が可能となりました。.
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さいたえん高原園芸研究所所長 / 飯田元喜

菜多園の特徴

当研究所の大きな特徴は、地理的・気候的・土質がそれぞれ異なる圃場を三ヶ所有することです。研究所の位置は高原に位置し、他に平野・海浜の圃場があります。個々の野菜栽培に適した圃場を選べることが最大の利点です。播種・生育・収穫のすべてにおいて、最も適した圃場による適期・適地・適作を限りなく追及した有機農業を試みることが可能ということです。

さて、私が幼少の戦中戦後、食料不足の時代以降、使用されてきた化学肥料・農薬の進歩は、飢えた私たち日本人を救ってくれました。しかしこれからの時代は環境と安全のため、有機での技術を再構築し、需要に足りる供給生産増の研究を行うことがまずは重要なことではないかと思われます。

農業の将来

 近年、野菜の生産は容易になってまいりました。栽培が困難とされてきた昔と比較して、容易にしているのは施設資材製品の開発や技術の進歩ではないでしょうか。葉物野菜の害虫対策での防虫ネットの効果などがその顕著な例です。
これから野菜栽培の将来が発展するとすれば、それは工業技術の恩恵の享受によるものと思います。地球環境は人間動物から畑の微生物にいたるまでかなりの恩恵を受けるでしょう。しかしそれらは化学工業製品が多数を占めるため、私は施設については造らず資材については最小限に抑える方針です。援農主任・作業研究員の皆さんの日々の創意工夫により、それを補う方法についての数々の試作・実験が続けられています。
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有機物の施肥方法

当研究所のもうひとつの特徴は、有機物の施肥の方法です。
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上の写真のような牧草が容易に入手しやすい環境にあり、年間500kgのロールを0.5ha当り約30個ほど施用しています。このことにより耕土が深まり、さらに土壌を団粒化させることができました。また、輪作休耕地の草は十分な生長後に刈り取り、一部焼畑的利用。残りの大部分は乾燥させて切り込み、鋤き込みを行い土に還します。
 このような耕作の方法が、耕地面積の広さから可能となっているのがヨーロッパの三圃場制です。 温帯の我国は春夏秋には採草に事欠くことはありませんから、地域的な協力や工夫があれば自然からの有機物の恵みを享受できるかと思われます。刈り草小枝など勿体無いと思います。
 害虫の忌避と病害の予防については、先人の知恵・書籍・長年に渡る自らの経験などで、ある程度の効果を確認すつことができるようになりました。
 また、肥沃な土壌の状態を作り、気象条件さえ良ければ、これらを特に必要としないことも判ってきました。最後に生命について、遺伝子のミューテーションについての解析は、今後のこの農業に大きな味方になるのではないかと期待しています。
 予測どおりになれば、いい意味で野菜栽培者の皆様がいま以上の高収益を得られる日々が必ず訪れると確信いたしております。

  さいたえん高原園芸研究所 所長/飯田元喜